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EXAMINATION 4 -考察-

EXAMINATION 4 -考察-


 宝石が原石として採掘され、ジュエリーとして実際に使用されるまでに、さまざまな物語がそれに携わった人々の人生模様として展開します。王家や皇室のジュエリーを持ち出すまでもなく、一般に私たちの周りに見られるリングのひとつをとってみても、付いているダイヤモンドの採掘労働者、取引ブローカー、研磨職人、輸入業者、デザイナー、加工職人など数え切れない人々が関わり、さらに製品化された後も、企画メーカー、卸業者、小売業者、そしてこれを買う人、使用する人、譲られた人、やがてこれを修理する職人や作り替える職人など計り知れない人々がとどまることなく関与します。ジュエリーが消耗品でなく恒久性をもった耐久財である限り、これに関わる人生模様はいつまでも続きます。

             『ピジョンの留め具』

 ユーザーがそのジュエリーとの間で織りなすストーリーは、ユーザーが実際にジュエリーを自分のものにした時から始まります。そしてそのストーリーが快感であり続けるか、不愉快なものになってしまうかは、そのジュエリーを着けている本人の個人的な生活状況と私的な出来事に依拠しているのです。Case 4での交通事故や日常の不愉快な出来事と、そのとき身に着けていたリングとの因果関係に客観性があるはずもなく、ルビーと事故とを結び付けるのは当事者の主観的な感情であり、それによって当事者は事故の原因を心理的に解消しているのです。安全祈願のおふだを持つのと同じで、ルビーを避ける事がこの女性の安全対策になったのでしょう。
 人はわざわざ負のイメージでジュエリーを持ちません。快感や充実、幸福というプラスのイメージでジュエリーを持つのが通常です。とすれば事故の際、指から出た血とその時着けていたリングとを結び付けて、事故の因果関係を連想してしまうこの女性の主観的結論もわからないこともありません。良質の真紅のルビーはピジョンブラッドと呼ばれ、それが事故の血と結びついたのだと連想すれば、この女性にとってルビーのリングは自分に災難をもたらすものとなってしまったのでしょう。
 ジュエリーがひとたび実際のオーナーやユーザーに渡ると、どのようなジュエリーといえども、その人のそこから始まる人生のさまざまな舞台で、出会い、体験したストーリーを刻印し始めます。つまりジュエリーはそのオーナーやユーザーの人生模様をイメージさせます。Case 3.4は、このようにジュエリーに刻印されたイメージを回避したり、消去してしまいたいという心的な要求から出てきた行為なのです。
・・・つづく。



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