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OCCASION -機会-

OCCASION -機会-


 10年前にニューヨークの宝石店を手伝いながら、真珠のネックレスの糸替え方を教えていたことがあります。そこには日本では経験したことのないほど多量のネックレスの糸替えや留め金具の交換修理が持ち込まれてきていました。真珠だけでなくトルコ石やサンゴ、ラピス、メノウなど実によく使いこなされた半貴石のネックレスが、汗とホコリとで変色した絹糸の結び目をさらけ出して大きなトレイに山積みされていました。
 それはまるで疲れてぐったりと休んでいる戦場の兵士のように、終息なき装いの戦いに再び赴く為の、一時の休息所のようにさえ思えました。
 真珠のネックレスのまるい真珠層の輝きはとけて剥げ落ち、真珠核がむき出しになり、珠と珠の間の結びコブが汗で汚れ、その汗が真珠の穴口を侵食して元々鋭く穿孔されていたはずの穴口を鈍型にしてしまっていました。


  『garden2』

 そのときあらためて、こちらのご婦人たちは、これほどまでに頻繁にジュエリーを使いこなすものかと驚嘆したものです。真珠のネックレスを仕立てるのに欧米では全ての珠の間に結び目をいれますが、日本ではこれをいれない場合の方が多い。ひとつの理由は使用頻度の差の為かもしれません。使用頻度が高く、糸が切れた場合のことを想定すると、各珠ごとに結び目(ナット)を施すのが安全のために当然の仕立て方であります。
 日本の婦人たちが真珠のネックレスをつけるのは年に数回あるかないかです。冠婚葬祭、卒業式と入学式が日本の婦人にとっては一般的で常道的なジュエリー使用の機会であります。通常まったくジュエリーをつけず、関心も興味も生じてこないご婦人たちでさえ、慶弔時には申し合わせたように真珠のネックレスをつけてきます。

・・・つづく。





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