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DILEMMA -板ばさみ-

DILEMMA -板ばさみ-


 ジュエリーの本質とは何でしょうか。それはその所有者との間に結ばれている価値が時間と空間を超えているということです。宝飾メーカーはジュエリーのこの本質を確保したまま資本主義経済の競争原理を貫徹せざるをえません。つまり量産と固有性の確保、低コストと高品質の維持、低価格とハイイメージというメーカーの企業理論と自らが生み出すジュエリーの本質との板挟みにおかれます。
 宝飾メーカーはどのような場合でもこの矛盾と葛藤の中で生産活動に入らざるをえないでしょう。作りだしたものが消費者のニーズに合致するか、市場のトレンドに乗ればある期間企業利益に与ることができるが、外れれば自ら生産したものに足元をすくわれるか飲み込まれてしまうのです。
 ジュエリーの本質は時間と空間を超えたものであり、その特徴はそれが個人の身につける恒久的な愛用品であるということであります。したがってジュエリーとは必ず、当然の帰結として個人の所有物になること、しかも身体につけるという生活の中で最も身近な愛用品であることが特徴であります。


『lady's on the rock2』

 この特徴はジュエリーというものが極めて個人的で私的な満足度や愛着度を価値としているということであり、そのような主観的な価値をそのジュエリーの持ち主が、将来においてさらに付与し、増殖していくという点でもあります。
 ジュエリーが単に外見的な装飾品ではなく、内面の存在を主張し表現している身体の延長、もしくは身体そのものだとすれば、これを商品として製品化するのに宝飾メーカーにはどのような構想力が必要でしょうか。この構想力がユーザーの内的な趣向、つまりユーザーのニーズまで達しているか否かが宝飾メーカーとして存立しうるか否かの剣が峰となります。
 安くて良いものを作り出すのはあらゆるメーカーの基本理念です。しかしこの定題は二律背反であります。コストを下げれば下げるほど質が高まることは無いわけです。高品質を目指せば目指すほど工賃などのコストを高めなければなりません。とくにジュエリーは既に見てきたように時間と空間を超えるものという作品としての品質を求められています。したがってこの二律背反の物づくりの世界で、宝飾メーカーは安くても質のいいものを作りだそうという葛藤の中において、物づくりをしなくてはなりません。このジュエリーとしての質を目指しながら、かつ低コストでジュエリーをつくり販売価格を定めなければならないという葛藤が宝飾メーカーの第1の視座でなければなりません。

・・・つづく。





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