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CASE A -出来事-

CASE A -出来事-


 65歳くらいの婦人。6年ほど前から私の店に立ち寄るようになった。来店されると一通り見回して、『響くものがないねぇ』『動かされるものが無いなぁ』『感動するものが今回は見当たらないですねぇ』と言って帰って行くことが多かった。
 彼女が今までに私の店から購入した物はアンティーク調のリングやネックレスなど、どれも私の店のオリジナルでしかも彼女の意見を取り入れたセミオーダーのものである。彼女は仕事や趣味に多忙に動き回っているらしく、自宅に電話を入れても夜9時前にはほとんど帰ってこないことが多い。足の先から頭まで、つまり靴から帽子までがこだわりの装いできまっている。周りの人に、今日は手を抜いているな。などとは決して思わせないように努めている女性である。自分のライフスタイルにあった装いのラインをつくり上げている人といえた。

『knock-knock1』

 ある時、久しぶりに店にやってきて、商品のほとんどを見渡した後『なにかグッとくるものが無いねぇ』と一括した。わたしも持ち札が無くなったので『Nさん、これでブローチを作ろうと思ってデザイン中でして、』と言って18ミリの変形真珠のルースをお見せした。すると『あら、私ならハットピンにして使いたいわ』と言って自分の帽子のサイドにその大きな変形真珠をあててみせた。
 私自身、彼女のとっさの発想に心から感服させられた。『なるほど、Nさんは私たちが考えもしなかったようなイメージが出てくるんですね』と伝えると、即座に『言っときますけどね、自分が自分の装いに気を使わなくなったら、そのときは一貫の終わりよ』とのこと。この一言が今の彼女をつき動かしている原動力なのだと感じた。

・・・つづく。





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