タイトル画像

[nou] -能-

[nou] -能-


 第二に注意すべきことは量感です。大き過ぎること、重すぎること、厚すぎることなどを避けなければいけません。ここ十年ほどの間に、海外ジュエリーが洪水のごとく日本に入ってきています。その中でも特にイタリヤやドイツなどのヨーロッパジュエリーに、日本女性にとっては重すぎたり、大きすぎたりするものが実に多い。ヨーロッパの女性と日本の女性とを同等にしてデザインするのは無謀といえます。
 日本の女性は能面に象徴されます。同じ表情で喜怒哀楽を表現し、その振舞いも性格も能の世界をとどめています。生活の形態はヨーロッパナイズしてきましたが、その振舞いや心の憩うところは畳、こたつ、着物と言ってよいでしょう。
 私は真珠の取引や金製品の買い付けのためにここ20年ほどニューヨークを訪れてきました。マディソン街などを歩いていると、肩まで付くほどのピアスをゆらしながら、大股で歩いている女性たちと何度もすれちがいます。しかし日本の女性は着物のすそ幅で歩くのが慎ましく、また体型にふさわしい歩き方のようです。


  『パピヨン2-3』

 この実態の違いを理解しないで、ヨーロピアンジュエリーをそのまま日本に輸入しても受け入れられるのは一時的にすぎません。物珍しさが過ぎれば日本の女性はおのずと日本的感性の中に落ち着いてしまうからです。私はイタリヤやドイツのデザイナー達に何度もこのことを言っていますがなかなか理解しようとしません。文化とはたやすくシフトできないものだと痛感させられます。
 実際、日本女性のおしゃれ文化は、ほとんどヨーロッパを志向して育ってきましたし、現在も欧米のファッショントレンドに影響されています。日本の服飾デザイナー達の多くがヨーロッパやニューヨークを根城に活動しています。日本のジュエリーデザインもヨーロッパのブランドジュエリーのコピーかアレンジのもので溢れているのが現状です。そしてヨーロッパジュエリーのほとんどは日本の女性の体型や動き、感性に合うようにアレンジするか縮小コピーをしなければとても馴染まないものです。実際に日本の文化を享受しているデザイナーが、日本の<場>の感覚にふさわしいデザインをしてはじめて日本女性の感性に合うジュエリーに到着するのです。

・・・つづく。





宝石屋さん.com やまやくらぶ

PageTop
 

トラックバックトラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)