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~流行とリフォーム~

宝石の裏側vol.2
~流行とリフォーム~



 自分が所有したり使用してきたジュエリーのデザインや、そのフォルムを作り替えたいという抑えがたい衝動に至るのに、人は内面的な要因と外面的な事情との複雑に絡み合った理由を持っているはずです。そこに注目してみると、人とジュエリーの関係が他の物品に比べ一種独特であることに気がつくでしょう。
・・・つづく。


             『珊瑚の実』



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FACTOR -要因-

FACTOR -要因-


 人は成長によって趣向が変化し、社会的プレステージが高まると、そのライフスタイルも変化していきます。そして、その自分自身の変化が要因となり、リフォームに至るということがあります。
 また、この自分自身の変化とは対称的に、ジュエリーの所有者が変わったためにおこるリフォームもあります。親や別人から譲られたもので、所有者の好みや使い勝手が違う為にリフォームをせざるを得ない場合です。とくに所有者や使用者の世代交代によって生ずるこの種の実例は取り上げきれない程頻繁であります。
 そしてリフォームに至る要因の第三は、そのジュエリーにまとい憑いているイメージを消してしまいたい場合でしょう。それは、過ぎ去った思い出を今の自分の身体には着けたくないという気持ちからおこります。


             『オレンジ・オレンジ』

 ジュエリーのリフォームとは、今までのフォルムを解体して新しく作り替える作業のことですが、外見を替えることは、それまでの古いジュエリーに盛られていた意味や価値を新しい器に盛りなおしたり、また事情によっては古い意味を消却してしまうことでもあります。 このようなリフォームへの衝動は前章のCaseでうかがい知ることが出来るでしょう。しかし、こうした要因のほかにジュエリーの愛好家たちの間では、単に持っているジュエリーに飽きてしまったとか、物足りなくなったり、嫌いになったりしてリフォームに至る場合があります。
・・・つづく。



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CURRENT -流れ-

CURRENT -流れ-


 これはジュエリーが目まぐるしく変わる社会的流行や時代的潮流に影響されるからでもあり、こうした流行は現在では世界中で同時的に展開されます。それは文化のボーダーレス化が進み、欧米のジュエリーはもちろんのこと、エスニカルなインドのジュエリーや神秘的な雰囲気をもつアフリカのジュエリーなどに、人は旅行先や雑誌、ウェブ上などで頻繁に出会うことが出来るからです。また日本の主要都市には世界のブランドジュエリーのメーカーが点在し、ジュエリー愛好家たちは労せずして世界の新しいデザイン潮流に触れることができます。

            『イエローダイヤピアス』

 そして日常生活のあらゆる場所で、人は自分の愛用しているジュエリーを他人の着けている物と比べたり、雑誌の中や宝石店のものと比較しながら、自分のジュエリーの満足度を計っているのです。
・・・つづく。



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CASE A~D -出来事-

CASE A~D -出来事-


 Case A 40歳代の女性。10年前に通販で購入したプラチナのサファイアペンダント、さらに、宝石店に勤める友人の勧めで6年前に買い求めた18金のダイヤモンドペンダントをご持参。これらを合体して一つのペンダントを作りたいとのこと。

 Case B 40歳代女性。プラチナ台のダイヤモンドピアス1セットと、8ミリのパールピアス1セット。これらを組み合わせてオリジナルピアスを作りたいとのこと。
 両方とも通販で求めた物で、本人自身もそれらを特に良い品質だとは思っておらず、あまりに一般的過ぎるものなので少し特徴あるものにしたいとのこと。


             『フラワー』

 Case C 50歳近い女性。プラチナ台に留めてある大粒の1個石ダイヤモンドのリング。知り合いの宝石商が資金繰りの悪化の事情で安くすると言うので購入したそうです。鑑定書はついていなかったとのこと。品質は良いものではないが、安かったことと長く付き合っている宝石商の頼みなので聞いてあげたという経緯。つい3ヶ月前に買ったものだが、好きになれず今は手放したいそうで、このリングをリフォームしてさらにお金をかけたくないという心情。

 Case D 65歳女性。ホテルの宝石展示会で付き合って購入した角ダイヤとメレーダイヤのプラチナリング。着けていてしっくりせず、デザインも一般的でおもしろくないとのこと。どうしたらよいか相談にのってほしい。
・・・つづく。



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PERMISSIBLE -許容範囲-

PERMISSIBLE -許容範囲-


 ジュエリーを購入する動機や機会がどのように生じてくるかは実に千差万別です。通信販売の場合、紙上ショッピングにせよテレビショッピングにせよ、その価格について言えば通常の流通価格から判断して求め易いものに設定されています。一般的なジュエリーの価格としては格安の感じを受けるものがほとんどで、有名タレントやテレビで馴染みのキャスターによる紹介や勧めもあり、観ている人に心理的安心感が加わり購買欲も高まってきます。注文した商品が手元に届いたとき、思い通りの物であれば、「この程度のもの」として納得しますし、想像よりも粗悪だったとしても「この程度のもの」として諦められるような価格のものであるわけです。

              『アヌビス神』

 つまり納得も諦めも可能な購入者の心理的許容限度内で商品とその価格が設定されているのです。これが通販の狙いどころで、これを利用する消費者も「この程度のもの」という納得と諦めの許容限度内を承知して申し込んでいるのが通常であります。
・・・つづく。



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EXAMINATION A~D -考察-

EXAMINATION A~D -考察-


 Case A,Bの女性は子育てと勤めの多忙な時間に、フォーマルな席に必要であるパールのネックレスやリング、外出時に気軽に着けるペンダントやピアスなどを買い求めるのに、通販を利用することが多かったそうです。満足はしないが返品するほど気に入らないわけでもないので、これまで通信販売を使用してきましたが、時が経つうちに自分の趣向が変化し、まわりの女性が着けているジュエリーの傾向や、店先のショウウィンドウや、雑誌のジュエリートレンドが気にかかるようになってきたそうです。その内に自分の持っているサファイアの色が良くないことや、デザインフォルムが一般的でどこでも見られる量販物であること、今の自分には小さすぎることなどが自分の中に沸き、リフォームに思い立ったというわけです。

              『さやえんどう』

 譲られたものであれ自分で買い求めたものであれ、ジュエリーはその所有者との間に出会いのストーリーを持っています。そして所有者がそのジュエリーを着けたり、手に取ったり、また話題にしたりするたびにそのストーリーが想起されるのです。したがって良いストーリーを購入動機に持てば想起されるストーリーは常に快適なものであるはずです。対してCase C,Dの女性のような購入のときに、つきあいや同情で購入したり、無理買いや衝動買いなどでジュエリーを求めると、時間の経過とともに後味の悪さがそのジュエリーにつきまとってしまうのです。
・・・つづく。



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RELATION -関係-

RELATION -関係-


 ジュエリーはそれがジュエリーとして店頭や通販で売られているから価値があるわけではありません。そこでは単に、値札の下がった商品にすぎないのです。ジュエリーは、ジュエリーとしてそれを所有し、使用する個人との間に快適な関係が存在して初めて価値を持つものです。つまり使用する個人に対して、ジュエリーから快適なイメージが発信されることがジュエリーの価値なのです。

             『無核の華』

 ジュエリー愛好家は常に良いイメージで宝石やジュエリーを求め、持ち続けることが大切です。自分の所有しているジュエリーが負のイメージを発信しているとすれば、もはやそれを作り替えるか手放すかの他に方法がないでしょう。
・・・つづく。



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CRAZE -流行-

CRAZE -流行-


 所有しているジュエリーに飽きたり、それを嫌いになってしまう原因は、一つには上記のようにそれの持っているストーリーの不快の為であり、もう一つには、自分自身の変化の為であります。自分自身が変化してしまうということは、本人の生活スタイルや内面的な変化が起因してくるが、もっと大きく〈流行〉という社会的な要因が影響してきます。
 誰もが持っているから自分も持ちたい。みんなが持っているから安心して持てる。周りの人が持っているから自分も取り残されたくない。流行はこのようにして消費者の購買心理に浸透していくのです。


           『イルカ』

 ジュエリーはその品質と価格の判断が難しいので自分の周りの人と同じでありたいという同族意識〈同じレベルになりたいという心理〉が他の物品と比べても特に作用します。また、職場や近隣で周りの人が頻繁に着けていて、テレビ画面でもよく観られるジュエリーであるため、買い求めて着けてもさほど目立ちもせず、気にも留められないという理由でジュエリーを手に入れる場合も極めて多い事例であります。 しかし社会に同じ物が出回るのと比例してその商品の評価も価格も下落していきます。同様にそのジュエリーに対して抱いていた貴重品としての価値も徐々に色あせるのです。このように時間の経過とともにますます艶の出るものであるべきジュエリーが逆に色あせてしまうのです。こうしたジュエリーは、もはや流行品と呼ばざるを得ないでしょう。誰もが着けているので自分も購入したいというジュエリーは、やがて社会のトレンドがさめるとしだいに愛着も色あせてしまうのです。
・・・つづく。



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SUBJECTIVITY -主観性-

SUBJECTIVITY -主観性-


 ジュエリーの評価はそこに使われている宝石や地金の市場相場の他に、それに登用されたデザインや制作費、仕上がり具合やオリジナル性などの付加価値が加わって決まります。しかしこれは客観的な流通価値、つまり取引価値にすぎないのです。

             『トルコペンダント』

 ジュエリーの主体的な価値というものは、それを使用する所有者が決定する極めて主観的なものであります。「自分の好みはこれである」という自分のジュエリーへの思い入れは、他人や社会の判断している一般的な価値観をはるかに超えて強いものです。自分の持ち物へのこだわりや思い入れが強ければ強いほど、流行などの社会的要因に影響されることなく自分のジュエリーへの愛着は変わらずに持続していきます。つまりジュエリーをいかに長く愛用できるかということは、そのジュエリーに対していかに強い思い入れを持っているかということと比例します。
・・・つづく。




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CONTRADICTION -矛盾-

CONTRADICTION -矛盾-


 自分が持っているジュエリーへの主観的価値が、そのジュエリーのメーカーやそれを供給している小売店側によって壊される場合があります。自分の愛用していたジュエリーと同じデザインのものが、百貨店や小売店の催事用の客寄せ商品として、頻繁にディスカウントされ始めると、たちまちにしてその主観的価値は色あせはじめてしまいます。
 ジュエリーは社会全般に流布され過ぎたり、大量生産されると、所有者が個人的に抱いていた主観的な価値はたちまち失われてしまい、グラム単価の地金価格や素材としての市場の流通価格に引き落とされてしまいます。安く買えることに消費者が喜ぶのも、つかの間にそのジュエリーの社会的な評価も個人的な価値もついえてしまうのです。


              『生命の力』

 商品の安いことは歓迎されることであるが、安いがゆえに価値も下落しまうことは歓迎されません。価格の低下と価値の低下を矛盾として受け止めざるを得ないのがジュエリーです。一度所有されたジュエリーはその価値を自分のオーナーに対して維持し高めていかなくてはなりません。オーナーとの私的で主観的な価値を維持し、増幅していくのがジュエリーの使命であります。
・・・つづく。



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REFORM -リフォーム-

REFORM -リフォーム-


 このように考察してみるとジュエリーのリフォームとは何であるかが明らかになってきます。価値の維持を使命としているジュエリーは、社会の流行が風化しても、ディスカウントの波が押し寄せても、毅然として自分の価値を発信するものでなければいけません。

              『森の恵み』

 持っているジュエリーに愛着がなくなり、そのデザインを替える場合に乗り越えなくてはならないハードルは何かといえば、社会の流行の変化や自分の趣向の変化などに耐えうるような、〈価値を維持できる〉ジュエリーを創り出すために、よく自分を知り、自分の感性に合うものを作り出す努力をすることであります。
・・・Vol.3へつづく。




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